代償分割と換価分割
こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。昨日の晩からの寒波で一段と寒くなりましたね。
さて、今日は遺産分割の方法の一例を。
相続が発生して現金などの流動性の高い財産ばかりであればすぐに分割できますが、財産が土地などの不動産しかない場合単純にはいきません。公平性を保ちつつ各相続人に納得のいく分割方法がないかを考えるうえで「代償分割」と「換価分割」という方法があります。
「代償分割」とは、不動産を相続人の誰か一人が単独で相続し、その代わりに他の相続人に対して現金等を支払うことで遺産分割に決着をつける方法です。これは 相続した不動産を手放したくない場合や不動産を相続した人が代償金弁済のための現金をすぐ用意できる場合によく用いられる方法です。
しかし、代償金弁済のための資金がない場合には問題が生じます。まず相続する予定のその不動産を売ってその売却代金を他の相続人に渡さなければなりません。不動産を売ったわけですから、売った人には譲渡所得が課税されることになります。この課税されること自体はしょうがありません、収入があったわけですから。ただし「代償分割」の場合、その不動産の取得者のみが譲渡所得にかかる税金を負担することとなってしまいます。しかも、譲渡所得の計算上、支払った代償金は譲渡費用等に含まれません。結果的に不動産の取得者の税負担は大変重いものとなってしまいます。
そこでもう一つの方法である「換価分割」を検討する必要が出てきます。
「換価分割」とは、その不動産を未分割のままで他人に譲渡して、その売却代金を相続人どおしで分配することで、その代金分配の割合によって譲渡した現物財産を取得した効果を生じさせる分割方法です。この方法であれば流動性の低い財産しかない場合であっても公平な分割が実現できます。さらに、譲渡所得の計算でも、その代金の取得額がそのまま各人の譲渡収入となりますので、だれか一人に譲渡所得が偏ることもなく非常に合理的で公平な分割方法といえるのです。
この「換価分割」を選択し、譲渡する土地について相続人名義へ取得登記する方法ですが、法定相続分で共有登記すれば問題ありません。もしくは、単独名義で登記をした場合であっても遺産分割協議書において「換価分割である旨」を明示しておけば大丈夫です。あとから思いがけない認定課税を受けないためにも税理士や司法書士等の専門家の助言のもと進めていくことが手続き上は安心といえそうです。