自宅事務所で家事関連費を経費にできるか
こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。連日、税理士会の会務で慌ただしい毎日です。
さて、本日は「自宅事務所で家事関連費を経費にできるか」です。フリーランスの方が自宅の一部分を事務所として利用するというのはよくあるケースでしょう。
売上を上げるため、事業のため、であれば問題なく経費に出来そうですが、実はこの家事関連費、原則として必要経費にできません。ただし、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限って経費計上が認められるというのが正しい解釈です。合理的な説明ができるのであれば認めますよというスタンスですから計上根拠の検討が必要になるのですね。
(参考)国税庁タックスアンサー No.2210 やさしい必要経費の知識
【根拠法】所法45① 所令96 所基通45-1
それでは家事関連費のうち経費にできるものにはどういうものがあるのでしょうか。
私なりの分類ですが、だいたい次の3つでしょうか。
①光熱費・通信諸経費、②住宅関連費、③車両関連費
①の光熱費・通信諸経費。
列挙すれば、電気代、ガス代、水道代、固定電話代、携帯電話代、インターネット代、新聞代、等々
事業と家事での按分基準に迷いますが、活動日・作業時間等の実状に合わせて〇〇%と決めてしまうしかありません。例えば固定電話は業務用FAX受信専用で家事用にはほぼ使わないというのであれば70%~90%経費としても説明できそうです。また、週3日程度の作業でたまにコーヒーを飲む程度ならガスや水道は10%~15%程度が妥当かもしれません。この辺りは正解があるわけではないので、第3者に説明して納得感があれば問題になるケースは少ないはずです。心配な方は税務署に聞いてしまうのもアリでしょう。
②の住宅関連費
賃貸物件なら家賃、駐車場代など。持ち家ならば、建物の減価償却費、固定資産税、火災保険料、住宅ローンの利息部分(元本部分はダメです)あたりでしょうか。住宅ローン控除を受けている場合には事業専用割合が増えるほど住宅ローン控除額が減る仕組みなので慎重な試算が必要です。(事業での使用面積が総床面積の10%以下であれば住宅ローン控除は満額受けられます)
(参考)租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて|国税庁 措置法通達41-29
一方で素朴な疑問も湧いてきます。
奥様が自宅で開業したとします。自宅関連費を計上したいのですが、自宅の名義(賃貸なら契約者)がご主人だった場合、かかった費用を奥様の事業の必要経費に算入して問題ないのだろうか…
結論はご主人名義の家事関連費も問題なく奥様の事業経費に計上できます。普通、ご主人名義の不動産を事業に使うからと言ってご主人に家賃など払いません。仮に払っても生計一親族への払いなので所56条で経費にできませんし。ただ、夫の有する資産を無償で当該事業の用に供している場合は、奥様の事業の必要経費に算入して構わないと言っています。家事支出(事業主借)として経理すれば問題ありません。所56条がらみ(家族間の所得分散を封じようとした規定)なので、考え方がややこしいですが、下記の国税庁へのリンクで確認してみましょう。
(参考)(親族の資産を無償で事業の用に供している場合)所基通56-1
③の車両関連費
減価償却費、自動車税、重量税、車検費用、自賠責保険、任意自動車保険、ガソリン代、洗車代、パーキング代
これらの領収証は漏れなく整理保存しておきましょう。按分比率は走行距離を基準にするのが最も納得感があります、ただ難しいケースもあるでしょう、その場合は活動日を基準にする方法も認められるはずです。仕事は平日のみで土日は業務をしないのであれば5/7(≒71.4%)としても否認されるケースは低いでしょう。ここでも第3者に説明して納得してもらえるか、一度決めた基準は一貫しているか等が大切になってきます。
冒頭で「明確に区分」された部分だけが必要経費にできると書きました。確かに適正な判断は必要なのですが、そこをあまりにも厳格にしてしまうとかえって必要経費にできる範囲が極端に狭くなり、適正な所得計算がなされなくなるという弊害も考慮すべきです。家事関連費を適正にもれなく事業経費にするためにできる手は尽くしましょう。